明治国際医療大学附属鍼灸センター便り  2000年2月24日

 

 鍼灸臨床の現場より  第4号


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大学へ

 

 

スポーツ傷害に対する鍼灸治療  (筋肉痛に対するコンディションニング)

片山憲史

 1.増えてきたスポーツ傷害 

 最近のスポーツ人口の増加は目覚ましく、特に人気のある野球、テニス、サッカー、バレーボール、バスケットボールなどメジャーなスポーツにおいては、それぞれが数百万人にのぼるスポーツ人口を有しているといわれています。しかしながら、一方において誰もが、一度や二度はスポーツ傷害に悩むことも極めて日常的なものになりつつあります。このことは自己流の不適当なスポーツ活動や誤った・過剰なトレーニング方法がもたらす弊害とも考えられ、今後このようなことが原因となるスポーツ傷害がますます増加することが予測されます。

 2.鍼灸医学とスポーツ傷害 

 地域医療がスポーツと密接な関係を持ち、その予防と治療を狙う上で鍼灸師の役割も非常に重要といえます。現在、臨床の第一線に働く多くの鍼灸師が、スポーツ傷害の予防や治療、さらにはリハビリテーションに関する知識を求め、また、健康のための運動処方や、病気に対する運動療法に関心を持っています。さらに最近ではプロ野球やJリーグ、社会人の各種目のトレーナーとして鍼灸師が活躍しています。平成5年より日本鍼灸師会主催のスポーツ傷害研修を契機に、スポーツ分野における鍼灸(スポーツ鍼灸)の意識が高まり、現在は毎年行われている国体やインターハイ、長野で行われた冬季オリンピック、各地における様々なスポーツイベントに多くの鍼灸師のボランティアが積極的に参加し、鍼灸治療等を行い高い評価を得ています。鍼灸の対象となるスポーツ傷害は、外傷(いわゆるケガ)や障害(使い過ぎ症候群)、さらにコンディショニング(体調や精神不安等の調整)などがあります。今回は筋肉痛に対するコンディショニングについて紹介します。

 3.MRI(磁気共鳴画像)による遅発性筋痛の解析と鍼治療効果の検討 

 バドミントンによる前腕の運動により実験的に遅発性筋痛を起こし、対照群と鍼治療群との比較を肘の関節から6.5cm末梢での磁気共鳴画像(MRI)の変化と痛みを指標に検討しました。その結果、自覚的な遅発性筋痛の程度とMRIによる画像の変化は一致する傾向を示し、遅発性筋痛を画像化し、緩和時間として定量化できることが可能になってきました。鍼治療群は対照群に比較して、画像変化のピークは早期に出現し、筋痛などの自覚的な痛みの変化はより早期に消退しました。これらから遅発性筋痛に対し、鍼治療が有効であることが考えられました。