解剖学の教育概要紹介

解剖学はI(講義)・II(演習)・III(講義・演習)・実習から編成されます。

 医療に携わる者にとって人体に関する十分な知識を持つ、ということは欠かすことの出来ない条件です。そのためには先ず人体の正常な構造を理解しておかなくてはなりません。構造を明らかにするためには、外観だけではなく内部を切り開き細かく調べる必要があります。まさに人体を解(と)き剖(わ)けて構造を追究する学問、人体解剖学、これが人体理解の第一歩となります。この知識の土台の上に、各器官の働きあるいは病変についての知識が積み上げられることになります。

 解剖学は一般に系統解剖学局所解剖学との二つに大別されます。前者は人体を特定の機能(働き)に基づいた系統(消化器系,神経系…など)に分け、それぞれの構造について順を追って説明していくもの(消化器系の場合,口腔から始めて食物の流れに沿って順次肛門まで)、後者は人体をいくつかの部分(頭部,頸部…など)に分けて、その部位毎に構造を明らかにしていくものです。後者ではいくつかの異なった系統の器官が横断的に同時に説明されることになります。従ってこれは系統解剖学が基礎となるものであり、応用解剖学あるいは外科解剖学とも呼ばれます。我々がここで学ぼうとするのは系統解剖学です。

 一方,細かく解剖を進めていくと肉眼的観察のレベル(肉眼解剖学)から細胞あるいは同種の細胞が集まった組織へとたどり着きます。このレベルになると観察手段として光学顕微鏡または電子顕微鏡(顕微解剖学あるいは組織学、細胞学)が必要になります。人体は多様な種類の数兆に及ぶ細胞で構成されていますから、これを正確に理解するためには組織・細胞に関する知識は欠かすことが出来ません。また我々が解剖学で学ぶ人体は通常発育の完成した個体を対象としています。しかし、完成したものを理解するためにはその完成過程を知ることは非常に有効な手段です。すなはち、1個の受精卵が分裂・増殖・分化を重ね、ついに完成された人体が形成される過程(発生学)をたどることにより、各細胞、組織さらに器官の性質を知ることができます。

 この様に我々がここで学ぼうとするのは、系統解剖学的方法に基づいて肉眼解剖学から組織学、細胞学さらに発生学の知識を網羅して人体の構造を理解しようと言うものです。人体の構造についての表現法は西洋医学と東洋医学では異なっています。しかし、いずれの立場から見たとしても構造そのものに違いがあるわけではなく、人体理解の場においてその重要性に差があるわけでもありません。


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2001.12.10