明治国際医療大学附属鍼灸センター便り  2001年10月1日

 

 鍼灸臨床の現場より  第11号


  

  

  

  

 

 

  

  

   

    

   

  

 

 

 

  

  

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生活習慣病としての肥満

      

.最近よく耳にする「生活習慣病」
  
「生活習慣病」とは、これまで成人病といわれてきた疾患の多くが、実は年齢に関係なく発生することから、1996年より「成人病」に代わって使用されている疾患群の名称です。
 生活習慣病には、食生活の乱れや運動不足が原因となる肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風、大腸がん、歯周病、喫煙による肺ガン、心筋梗塞、気管支炎、肺気腫、お酒によるアルコール性肝炎などがあり、いずれの疾患も初期の状態ではほとんど自覚症状が無いことが特徴です。
 生活習慣病は、血管が狭くなったり、硬くなったりする動脈硬化が原因となることが多く、このことが高血圧、高脂血症、糖尿病などを引き起こし、さらには日本における死因の第2位の心疾患(心筋梗塞)や第3位の脳血管障害(脳卒中)を発生させているといえます。また、動脈硬化は無症状で進行し、そのために治療が施されていない潜在的疾患発生の予備軍が多く存在しており、生活習慣を改善せずそのまま放置すれば疾病の発病が非常に高くなることになります。
 生活習慣病において動脈硬化と大きな関係にあるのが肥満です

.あなたは肥満?  
 
肥満とは、体内に余分な脂肪が蓄積した状態を示し、BMI(body mass index:体格指数)で表されます。BMIは体重÷身長(m)×身長(m)で表され、肥満学会では、BMIが25以上を「肥満」とし、さらに高血圧、高脂血症、糖尿病などを伴い治療が必要な場合を「肥満症」と定義しています。なおBMIの基準値は20~22であり、この値は病気の発生が最も低くなる値です。
 一方、BMIが正常であっても、体脂肪率(=体脂肪総重量÷体重×100)が高い場合も肥満と同様に問題となり、男性で25%以上、女性で30%以上は動脈硬化の発生率が高くなってきます。またBMIが25以上の場合、体型によってリンゴ型肥満(内臓脂肪型・男性型肥満)と洋なし型肥満(皮下脂肪型・女性型肥満)に分類され、前者は「肥満症」として治療が必要となることが多く、高血圧、高脂血症、糖尿病を合併する危険度が増加し、生活習慣病の発生が高くなるタイプといえます。
 内臓脂肪は腹部CT検査で判定しますが、リンゴ型肥満の簡便な判定方法として、ウエスト÷ヒップ=0.8以上で判断することができます。

3.肥満の予防・・そして鍼灸治療
 
肥満を防ぎ、肥満を改善することは生活習慣病の予防のために大変重要です。その基本には食事療法と運動療法が中心となります。食事療法では、量や質、食べ方(三食ゆっくりと、一口30回以上噛むことを心がける)を見直すことが大切です。運動療法では、有酸素運動(少し早めの散歩程度で持続的に20分以上の運動)を行うことが必要です。いずれの行動もストレスをためず、無理のないよう楽しく行うことが肝要で、継続してこそ効果が期待できるといえます。
 鍼灸では、食事や運動療法の併用療法として、肥満症や糖尿病の患者に対して耳鍼療法(耳の特定のツボに針を貼り付けたり、針に電気を流したりする)を行います。すべての患者さんで効果が認められるわけではありませんが、「食事のコントロールが無理なくできるようになった」とか「血糖値が安定してきた」などといったことが観察され、鍼灸治療の効果が認められています。また、全身的な鍼灸治療によっても、身体のこりや緊張がほぐれることで、身体的・精神的安定が得られ、生活習慣病の予防に寄与することが可能となるといえるでしょう。