明治国際医療大学附属鍼灸センター便り  2002年2月1日

 

 鍼灸臨床の現場より  第13号


     

 

     

 

   

  

   

    

   

 

    

  

  

 

 大学へ

 

 

新しいコミュニケーション


1.
鍼灸治療上も重要な術者と受療者とのコミュニケーション
 
友人関係、夫婦の間、学生と教師間等において良好な人間関係を築くために、コミュニケーションを図ることは重要です。近年になり、心地よいコミュニケーションを図ることが、癌細胞などを死滅させるキラー細胞を活発化させるなど、健康の維持に有用であることが解ってきました。その意味でも鍼灸治療を受ける人と治療者のコミュニケーションは重要な治療のひとつと考えられます。さらに最近ではコミュニケーションを新たな治療法として用いようとする試みもあります。

2.治療に応用される新しいコミュニケーションとは?
 
神経言語プログラミング neuro-linguistic programming は、1976年にカリフォルニア大学心理学部のジョン・グリンダー教授により理論化されました。このプログラムは家族療法や催眠療法といった様々な心理学的な治療方法に、神経精神生理学や言語学などの学問的理論を取り入れた新しいコミュニケーション治療プログラムです。 この理論の根幹には、「人に伝達された情報は、実際には現実を狭くとらえたり、歪めたりする可能性がある」との考えが含まれています。すなわち、視覚、臭覚、味覚、触覚の五感からえられた情報は、興味、価値観、信念、思い込みといった要素によって変化しているのではないか、ということです。従って、通常は何の変哲もない情報(状況)に対して病的な反応を示してしまう恐怖症や不安症といった精神的疾患に対しても、この神経言語プログラミングを用いてコミュニケーションを取ることにより、患者自身の中で病的に変化している情報に気づかせる事が出来、治療に役立つと考えられているのです。

3.神経言語プログラム理論における思考回路とコミュニケーション
  −円滑な人間関係の形成のために− 
 神経言語プログラミング理論によると、人には3種類の思考回路があるとされています。すなわち、1)視覚から得た情報を優先して物事を判断する回路、2)聴覚から得た情報を優先して物事を判断する回路、3)触覚や臭覚、味覚といった身体感(体感)を優先して物事を判断する回路、です。こうした思考回路は、年齢や生活環境によって差が生じ、これを理解する事で、円滑なコミュニケーションを図ることが出来ます。

 我々の研究によると、20〜30歳代では、視覚からの思考回路を用いる人が多く見られました。この年齢層の人には視覚的な言語、たとえば「焦点」「場面」「描く」「明らかにする」「見通し」等の言葉を用いれば、よいコミュニケーションが図れます。また、60歳代と10歳代では、聴覚からの思考回路と、身体感(体感)からの思考回路のいずれかを重視する二極化が見られました。聴覚からの思考を重視する人には、「口調」「アクセント」「リズム」といった聴覚に関連する言語を用いたコミュニケーションを図り、身体感(体感)からの思考を重視する人には「接蝕」「触れる」「暖かい」など体感を示す言語を用いたコミュニケーションを図ることで、円滑な人間関係を築くことができるのです。