明治国際医療大学附属鍼灸センター便り  2002年5月1日

 

 鍼灸臨床の現場より  第15号


     

 

     

 

   

  

      

     

 

 

 

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スポーツ傷害の鍼灸治療

       片山憲史

1.スポーツ傷害について
  最近のスポーツ人口の増加は目覚ましく、特に人気のある野球、サッカー、テニス、バレーボールなどメジャーなスポーツにおいては、それぞれが数百万人にのぼるスポーツ人口を有しているといわれています。しかしながら、一方においてスポーツ傷害に悩むことも極めて日常的なものになりつつあります。このことは自己流の不適当なスポーツ活動や過剰なトレーニング方法がもたらす弊害とも考えられ、今後このようなことが原因となるスポーツ傷害がますます増加することが予測されます。そのためには、現状においてスポーツ傷害を予防するための適切なスポーツ活動やトレーニングを指導する体制が望まれています。
 

2.スポーツ傷害における鍼灸療法の発展
  人々の健康をまもる立場にある鍼灸師も、スポーツ傷害に無関心であるわけにはいきません。地域医療がアマチュアスポーツと密接な関係を持ち、その予防と治療を狙い、スポーツ医学として発展していくには、その中における鍼灸師の役割も非常に重要といえます。 現在、臨床の第一線に働く多くの鍼灸師が、スポーツ傷害の予防や治療、さらにはリハビリテーションに関する知識を求め、また、健康のための運動処方や、病気に対する運動療法に関心を持っています。さらに最近ではプロ野球やJリーグ、社会人の各種目のトレーナーとして鍼灸師が活躍しています。 平成5年より日本鍼灸師会主催のスポーツ傷害研修を契機に、スポーツ分野における鍼灸(スポーツ鍼灸)の意識が高まり、現在は毎年行われている国体やインターハイ、長野で行われた冬季オリンピック、各地における様々なスポーツイベントに多くの鍼灸師のボランティアが積極的に参加し、鍼灸治療等を行い評価を得ています。

3.高校野球選手における鍼灸治療の実態調査
 162名の高校野球選手(硬式)にアンケート調査を行い、スポーツ傷害の経験者74%の内、外傷は足関節、膝関節、指の順に多く、使いすぎ症候群である障害は肘関節、腰、肩関節の順に多く見られました。スポーツ傷害経験者の約40%が鍼灸治療を経験していました。スポーツ領域での鍼灸治療の認識は59.8%、鍼灸治療の経験は29.6%であり、今後鍼灸治療を希望する者は49.3%でありましたが、鍼灸治療の認識と今後の治療希望者は、傷害経験者の方が未経験者に比較して高率でありました。また、鍼灸治療の認識と今後の治療希望者の率は高く、鍼灸受療者の今後の増加が期待できると思われます。