明治国際医療大学附属鍼灸センター便り  2002年6月1日

 

 鍼灸臨床の現場より  第16号


     

 

     

 

   

  

   

      

   

   

 

 

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月経痛に対する鍼灸治療

  笹岡知子

1.月経痛(生理痛)って病気なの?

  月経痛は8〜9割の人が経験する症状で、程度の軽い場合は問題ありません。しかし、日常生活が妨げられる様な強い痛みであれば病気であり、治療が必要となります。

2.月経痛の種類と、鍼灸治療の適応・不適応
  月経痛は大きく分けて2種類あります。一つは、初潮後数年経った頃に、排卵周期の確立に伴い出現してくる月経痛です。月経時以外に症状が無いのが特徴で、鍼灸治療の適応となります。 もう一つは、20代後半〜30代以降に、子宮内膜症や子宮筋腫などが原因で起こる月経痛です。月経時以外の下腹部痛や、排便や性交に伴う痛みがある場合はこのタイプが疑われるので注意が必要です。こちらは鍼灸治療の適応外で、婦人科での治療が必要です。
  

3.月経痛に対する鍼灸治療
  鍼灸医学では、月経を周期的に起こる気血の動きとして捉え、気血の流れの滞りにより月経痛が起こるとされています。気血の流れが滞ると、月経痛だけでなく、肩こりや手足の冷え、倦怠感なども起こります。これら種々の症状も含めて全身的に鍼灸治療を行うことが、月経痛の治療には必要です。 患者Aさん、29歳の既婚女性。海外から帰国した後より強い月経痛が出現し、婦人科にて鎮痛薬の治療を受けましたが、それでも症状が強いために心療内科でのカウンセリング治療を併用したこともありました。月経痛の他に、肩こりや頭痛、不眠、嘔吐、下痢・便秘などの様々な症状もありました。鍼灸治療を始めた頃より、頭痛や肩こりが軽減し、全身的な体調が改善しました(グラフ;症状点数)。月経痛も月を追うごとに軽減し、半年後には鎮痛剤を使わなくても我慢できる程度の痛みまで改善しました(グラフ;痛みスコア)。