明治国際医療大学附属鍼灸センター便り  2003年4月1日

 

 鍼灸臨床の現場より  第21号


     

 

     

 

   

  

   

 

  

   

   

 

 

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米国カリフォルニア州における鍼灸治療

      鶴 浩幸
1.カリフォルニアでも盛んな鍼灸治療
  
現在、鍼灸治療はアジア地域だけでなく、西洋文化(西洋医学)の国アメリカでも盛んに行われるようになってきました。カリフォルニア州では日本と法律や試験制度が異なり、鍼灸師が生薬(漢方薬)の処方を行っています。そして治療内容は中医学(伝統中国医学の理論を基にして、鍼灸や生薬の治療内容を考える)に基づくものがほとんどです。お灸についても、直接灸(皮膚の上で直に灸を燃やす)を行うことはほとんどなく、棒灸や間接灸と呼ばれる灸の痕が皮膚に残らないお灸が行われています。

2.来院患者の実状
  
カリフォルニア州のバークレー市にある鍼灸診療所で、1996年から1999年の来院患者2967名を対象に調査を行いました。その結果、来院患者の平均年齢は38歳(男性の平均年齢は38歳、 女性は37歳 ) で、20歳以上40歳未満の若い患者が多いことが分かりました。また、女性が全患者の65%を占めました。更に、患者さんの75%は、病気そのものの治療よりも、具体的な症状を軽減して欲しくて来院していることも分かりました。その苦痛の内容は、"何らかの痛み"が最も多く41%を占めました。 その他には、疲労(5%)、ストレス(4%)、アレルギー性鼻炎 (2%)、喘息 (2%)、感冒(1%)等の訴えがあり、多種多様な苦痛の軽減に対する治療として鍼灸(生薬)が期待されていることが伺えます。なお、患者さんの84%は鍼と生薬の併用治療を受けていました。


女性患者が多いのは、鍼灸医学が慈愛(母性)の精神を持っているから?

3.西洋の国にも広がる鍼灸医学
  
現在では、鍼灸医療はアジアだけでなく、米国においても大きく発展する可能性が開けてきています。カリフォルニア州では、東洋医学の大学(日本では大学院に相当する)で3年間の勉学と臨床(実際の治療)を修了すると鍼灸師の受験資格を得ることができますが、毎年、鍼灸師となるための資格審査は厳しくなっており、今後益々、東洋医学診療(鍼灸、生薬等)が盛んになることが予想されます。日本も鍼灸医学の先進国として、世界の模範となり国民の健康増進や社会福祉に更に寄与していくことが期待されます。