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鍼灸臨床の現場より 第27号
大学へ
パーキンソン病に対する鍼灸治療 −痛みや自律神経症状を鍼灸治療でコントロール−
江川 雅人
1.パーキンソン病とは?
パーキンソン病は、中脳から分泌されるドパミンという神経伝達物質が少なくなって起こる病気で、振戦(ふるえ)、動機緩慢、筋のこわばりを主な症状とします。L−DOPA療法と呼ばれルすぐれた治療法が開発された現在も、多くの患者さんが鍼灸治療を希望して来院されます。
2.腰痛や便秘を訴えたパーキンソン病患者への治療例
Sさんは62歳の男性。1年ほど前から手のふるえと動作緩慢を自覚し、大学病院でパーキンソン病と診断され投薬後はふるえはほとんど無くなりましたが、動作緩慢に伴う歩行困難は相変わらずで、腰痛や肩こり、便秘、手足の冷えなども加わり、体調のすぐれない毎日でした。知人から鍼灸治療を勧められ明治国際医療大学附属鍼灸センターを受診しました。鍼治療は、鍼灸医学的な診断に従った全身療法と頭皮鍼療法を週に1回行いました。その結果、治療の継続に従ってパーキンソン病に特徴的な動作緩慢の軽減が得られました。また、腰痛・肩こり、便秘、冷えも軽減しました。現在も2週に1回程度の治療を継続中です。(下図参照)
3.パーキンソン病に対する鍼灸治療の適応
パーキンソン病では振戦や動作緩慢以外にも多彩な症状が出現します。Sさんにみられた腰痛や肩こりは筋のこわばりに、便秘や冷えは自律神経機能の低下によるものです。特に便秘は薬効成分の体内吸収を阻害するために適切な治療が必要です。こうした症状は投薬量を増やすだけでは解決できません。筋肉の緊張をほぐし、自律神経機能を回復させる鍼灸治療の併用が有効です。その効果は、すぐに現れるものではありませんが、治療を気長に続けることで、次第に症状の軽減が得られます。