明治国際医療大学附属鍼灸センター便り   2000年1月24日

 

 鍼灸臨床の現場より  第3号


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

    

    

   

 

 

 大学へ

 

 

鍼灸治療で血圧管理を

廣 正基

 

1.血圧の管理は生活習慣病の予防に 

 高血圧は、種々の病気のリスクファクター(危険因子)になります。脳卒中、心臓病、血管の病気などの生活習慣病は高血圧と関係が深い病気です。従って血圧の管理は、それらの病気を予防するために非常に大切になります。血圧を管理する方法として、塩分・脂肪摂取の制限、適度な運動習慣、節煙・節酒、規則正しい生活リズムなど、生活習慣の適正化が勧められています。一方、鍼灸治療にも血圧を適正に維持・調整する効果があります。

 2.血圧リズムと病気 

 血圧は一定の値をとることはなく、常に変動しています。これまでの血圧測定は随時血圧といって、ある時点での血圧測定でした。しかし、変動している血圧を正確にとらえるには24時間の測定が必要です。このような研究によって、日中高く、夜間低いといった血圧リズムがあることが分かりました。しかし、中には夜間の血圧が下がらなかったり、早朝に血圧が高くなったり、一日中不安定であったりと、異常血圧リズムが存在することが明らかになりました。

 3.24時間血圧測定からみた鍼灸治療の効果 

 そこで鍼灸治療の血圧への効果を観察するために24時間血圧測定が出来る装置を用いて検討しました。下図は高齢者高血圧症の症例で、治療前は24時間平均血圧は167mmHgと高かったのですが、週2回の鍼治療を2ヶ月間行ったところ治療終了時には143mmHgと低下しました。その効果は150mmHgを越えた赤い部分の面積(ハイパーバリック・インデツクス)の減少としても観察されます。勿論、血圧だけではなく、主訴と心身の愁訴の軽減も観察されました。このように鍼灸治療には、症状の改善とともに血圧をも正常化する、いわば全身調整的な効果が期待できます。なお、血圧が正常域にある患者には、鍼灸治療で下がることなく、正常な状態を維持するよう作用します。鍼灸治療には異常状態を是正し、正常状態を維持する、といった特徴がありますが、このような作用はまさに自然治癒力の特徴といえましょう。